秋冷

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 今年の秋は早い。

 9月に入るか入らないかのうちに、秋雨前線が現れた。

例年、この前線は9月半ばを過ぎておもむろに立ち現われるのだが、今年はどういうわけか夏が終わったのかどうかという時期に、ぬっくと姿を見せた。

 だから秋は早いに違いない。早かろうが、遅かろうが、特段の問題もななそうだが、秋の気配が早いということは、それだけどういうわけか寂しい。秋は何故か人生を振り返る機会が多い。振り返れば、即ち、あと幾ばくも無いことを知る。これが寂しからずや、ということに繋がるのではないかと思う。

 な~に、秋なんぞは一つの季節の通過点に過ぎないのだ、と思うこともできるが、来年もまたこのようにある、ということは誰もが保証できぬ。となれば、この今が今生の秋かもしれない。

 観念の上で、無暗に無常がっても屁の役にも立たない。それはあたかも、彼の詐欺師の吉田兼好の如し。あんな奴の二の舞はまっぴらごめん蒙る。どうか、観念ではなく、この世を見せてくれなくいか。

 つまるところ、世をも知らずして彼岸に赴く。

 それで悪いかという気もする。