蚊遣

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お盆を過ぎて鬼の如き酷暑は薄らいだ。

しかしながら、敷地が狭い家はすぐそばに植え込みやら雑草やらが生えていて、あの気色の悪い蚊が我が物顔に跋扈している。

最近の蚊はたちが悪く、陽炎のように音もなく人の傍にまとわりついてきて、当人に断りもなく刺していく。これがためにそれと気づかないうちに、あちらこちら食われてしまう。昔だったら、ぷ~~~んなどと言いつつ、あからさまに肌に取り付いて、あからさまにぶすりと刺したものだが、最近のはすべて隠密行動なのだ。

蚊には、刺されるのか、それとも食われるのか、それがだいぶ前から気になっている。蚊に食われる、という状況は尋常ではないように思う。動物界の帝王である人間を食うのは、まあ、ライオンぐらいなもので、他の動物は少なくても人を無暗にむしゃむしゃと食ったりはしない。それなのに、わずか数ミリの体の蚊に食われるというのは普通のことではない。ましてや、蚊がむしゃむしゃと人を食うなど、考えただけでおぞましい。

にもかかわらず、「蚊に食われた」という表現がこの世には蔓延している。何事ならんや。

蚊に対抗するには、なんといっても渦巻き型の蚊遣をぼうぼうと燃やすのが一番。煙も出ない、臭いもない、そんなもので蚊が退治出来るとは、神かけて思えない。どう見たって、煙りモクモク、匂いバンバンの渦巻にかなうものはない。

であるからにして、我が家では渦巻蚊取りを絶やしたことがない。夏ともなればこの渦巻の先っちょに点火して、思い切りぼうぼうと燃やす。そうしてそのくさい煙の中で、ひとときの安寧が約束されるのだ。

蚊遣は渦巻。